今回は「就活って何だ 人事部長から学生へ」(森健著 新春文庫)を読んで考えたことです。
この本は、就活の人気企業の人事部長(採用の責任者。肩書きはバラバラです)に直接取材をしたとあるのですが、2010年の採用活動直後の取材ということもあってか臨場感たっぷりの内容です。
各企業6ページ前後にまとめられているので読みやすく、比較しやすいのがポイント高いですね。
まとめの部分で『理想の人材像』なるものが提示されているのですが…
「コミュニケーション能力に長け、困難に出会っても知恵と根気でやり遂げる知力と胆力があり、新しいことに挑戦するチャレンジ精神に富み、集団を率いるリーダーシップを持ちながらも、チームワークを重んじ、協調性も欠かさない」(242ページより)
……何処の完璧超人ですか? コレ と思いました。
実際、この直後に「実際にいるのかは不明だが」とあるのですが、私はこれを見て転職市場における採用基準(表向き)を思い出しました。
「対人能力が高く、高度な専門性を持ち、チャレンジ精神に富み、困難に喜んで立ち向かい、教育なしに成果を上げつつ、チームワーク/協調性を持つ」
たぶん、このような感じになると思います。
コミュニケーション能力・協調性のあたりは集団で何かを行う以上必要ですが(必要とされるのは応募者だけではく企業の既存の構成メンバーもです。意外とこの辺を「郷に入りては郷に従え」で切り捨てる企業に限っていい人材がいないとぼやいているように感じます)そのほかの要素は併せ持つ必要はないと思うのです。
困難なことを避ける社員ばかりでは困りますが、困難を困難と解らないのはもっと困ります。
チャレンジしないと縮小均衡まっしぐらですが、チャレンジしない人が無価値というわけではありません。
リーダーは居ないと困りますが、リーダーばかりでは「船頭多くして船山に上る」でしょう。
チームワーク皆無は困りますが、ヒット商品の多くは個人の発想を伸ばした結果生まれています。(当然、最初は売れるわけないと言われます)
新卒にしても、中途にしても、その人の特徴があればいいのではないかな? というのが今の私の結論です。
適材適所という言葉がありますが、人材の特徴を生かせる仕事(例:チャレンジ精神豊富な人は前例の少ない仕事、堅実な人には前例のある仕事)を割り振るのが管理職の仕事であって、万能選手をそろえて楽をするのが管理職の仕事ではない、と。
管理職などという偉そうな立場ではありませんが、開発チームの進捗管理をする身としては常にこのことを気にかけていかないと、と思いを新たにさせられた本でした。
蛇足ですが…
ソニーなりホンダなり松下なり、いずれの創業者も得意分野を持つと同時に苦手分野を他者にフォローしてもらっています。(荒っぽく言うと、ソニーとホンダは技術屋と営業系の組み合わせなのでわかりやすいですね)
「名経営者に学ぶ」とか言って書籍を読んでいる人が冒頭の「理想の人材像」を持っているとしたら、何を学んだのか聞いてみたいですね。
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